腹黒王子に秘密を握られました
うちの会社の定休日は水曜だ。こいつは今日は普通に仕事だったはず。
なんで日曜の同人誌即売会なんかに来てるんだよっ!
「この近くの物件に用があったついでに、寄ってみたんだ。もしかしたら友野さんいるかなと思って」
人懐っこい爽やかな笑顔を浮かべながら、そう言う金子。
「ど、どうして、私がここにいるって……」
動揺のあまり脇汗はんぱない。動悸もすごい。頭がくらくらする。パニックだ。
「これ、忘れていったよ」
そう言って目の前に差し出されたのは、見覚えのあるUSB。
「ひぃぃぃぃぃっ!」
それを見た瞬間、一気に全身の血の気が引いた。
……しまった。
あの日、印刷所にデータを入稿した時、慌ててパソコンは落としたけど、USBを持って帰るのを忘れていたんだ。
「ま、まさか……。な、中、見たんですか……?」
人のUSBのデータを勝手に見るなんて、プライバシーの侵害だ。最低だ。最悪だ。人間失格だ。
そんな思いを込めて、思いきり睨み上げる。