腹黒王子に秘密を握られました
「友野さん。会社のパソコンには顧客の個人情報が詰まってるから、個人のUSBを接続するのは禁止されてるの知ってるよね?」
「う……っ」
「友野さんが会社のデータを持ち出そうとしてたなんて疑われたら、罰則は免れないだろうから、俺が中身を確かめたんだけど、さっさと上司に渡したほうがよかった? そうしたらこの中のデータが社内に公表されて、始末書を書くことになるけど」
「うう……っ」
万が一そうされていたら。想像して吐きたくなった。
社員全員に私が書いたBL漫画を読まれ、嘲笑われ軽蔑されて、下手したら仕事は首になる。
頭に浮かんだ恐ろしい状況に、ぶるりと身震いをした。
「中を見て驚いたよ。仕事もできて美人で完璧な友野さんに、こんな趣味があったなんてね」
そう言って笑う金子の顔から、いつもの爽やかな仮面が剥がれ落ち、人をからかうような意地悪な微笑が浮かぶ。
あ、これ私の人生終わったわ。
その微笑を見て私はそう悟った。
「お、お願いだから、会社には言わないで……っ!」
いつも完璧な女を装っていたくせに、実は腐女子だったなんてバレたら、会社にいられなくなる……!
「どうしようかな。理由はどうあれ、社内規程に違反したわけだし?」
USBを持つ右手にしがみついて懇願する私を見下ろす冷たい視線。優位な場所から弱者を見下ろす、傲慢な表情。
くっそう、いい気になりやがって!
ぐぎぎぎぎっと、悔しさに奥歯をかみしめる。