腹黒王子に秘密を握られました

「マンションのネットが繋がらなくて、仕方なく会社のパソコンを使ったの! あの日のうちにデータを送らないと、イベントに印刷が間に合わなかったから、仕方なく!」

「バカだな。それなら会社じゃなくて、ネットカフェに行けばよかったのに」

はっ! 確かに!
私としたことが、なんで思いつかなかったんだ!

なんて、今更後悔しても、もちろんもう遅い。

「……そうだな。内緒にして欲しいんなら、俺の言うこと聞けるよな?」

茶色の虹彩の瞳を細め、そう意地悪に笑った金子を見て、私は思わず震えあがる。

きっと口止めのかわりに、私にいやらしいことをするんだ! エロ同人誌みたいに!エロ同人誌みたいにっ!

私の心の叫びが漏れていたのか、金子は「ちげーよ」と呆れたようにため息をついた。

「弱みを握った交換条件に、身体を要求するほど女に困ってねーよ」

……ですよね。
社内の全女子社員から熱い視線を集める金子敦が、わざわざ私みたいなオタク女を相手にするわけないよね。

ほっとして息を吐き出した私に向かって、金子はとんでもないことを言いだす。

「誰にも言わないでやるから、俺と付き合ってるフリして」

「はぁ……!?」
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