腹黒王子に秘密を握られました
そんなことを考えて、バスの窓に額を押し付けて溢れる萌えを噛み絞めていると、
「お前、興奮しすぎて鼻息で窓ガラスが曇ってるぞ」
と冷たい声が聞こえてきた。
「はっ……!」
ぎょっとして振り返ると、そこにいたのは、
「金子敦……!」
貴様、なぜここに!
私の座る一人掛けの座席の横に、いつのまにか金子が立っていた。
昨日の即売会といい、今日バスといい、なんて神出鬼没な男だ。
もしかして、ストーカー? こいつ、私のストーカーなの?
「バァカ。誰がお前のストーカーだ。俺も普段からこのバスに乗ってるんだよ」
まじですか。知らなかった。それならもっと前に、声をかけてくれればいいのに。
「お前いつも窓の外ながめて、男子高校生を見ると目を血走らせてるから、声をかけにくかったんだよ」
「くっ……」
たった今も、自転車の二人乗りをする高校生を見て、妄想にふけっていたところだった私は、反論もできずに歯を食いしばる。