腹黒王子に秘密を握られました
 
「まさか、昨日のことを忘れるなんて……」

昨夜はイベントでゲットした素敵な御本に埋もれ、一冊読んでは悶えて床を転げまわり、一冊読んでは萌えすぎて五体投地で涙を流しと、充実した夜を過ごした。

そのおかげで今日はかなり寝不足で、金子敦のことなんて頭の片隅にもなかったわ。


……なんて、怖くて言えないので、曖昧に首を傾げて微笑む。

気まずい会話を終了させたいときの、私の必殺技だ。
はにかんだ笑顔を向け、おまけにパチパチとまばたきも二回つけくわえる。

これで金子も黙るだろうと思っていたら、なぜか爽やかイケメンの眉間に、深いシワが刻まれた。

「猫かぶって誤魔化してんじゃ、ねーよ!」

「い、いたいいたいいたいいたいっ!」

完璧に決められたアイアンクローに、私は光の速さで金子の手首を叩きタップする。

「ちゃんと恋人のフリしないなら、あのUSBを課長に渡すからな」

「わかった! わかったから! ギブ! ギブギブっ!!」

やっとのことで悪魔の右手から介抱された私は、両手でこめかみをおさえ涙目で金子のことを睨み上げる。


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