腹黒王子に秘密を握られました




ゴシゴシゴシゴシ。
ゴシゴシゴシゴシ。



雑念を払うように、ひたすら白い陶器の便器を磨く。

掃除用のゴム靴にマスク。ゴム手袋にメガネ。朝早く出社して完全防備でトイレ掃除をするのが、朝の日課だ。
今日はイヤなことがあった分、いつもより念入りに。もくもくと掃除をする。

すると背後で扉の開く音がした。

「あ、友野さん、掃除中だった?」

振り向けば課長がトイレに入ってくるところだった。

「おはようございます。もう終わるところのなので、大丈夫ですよ」

「いつもえらいね。ありがとう」

「いえ」

「友野さんだけじゃなく、二課の女の子たちにも掃除させればいいのに」

そう言われて、ゴム手袋を外しながら慌てて首を横に振った。

「あ、これは私が個人的にやってるだけなので!」

ビル清掃の業者のおばちゃんが夕方頃に清掃に入ってくれるけれど、お客様が使うことが多いこのトイレは、私が朝も掃除している。
誰から言われたわけでもなく、やりたくてやっていることなので、他の女子社員に強要するつもりなんてない。


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