腹黒王子に秘密を握られました

老若男女問わず一撃で懐柔できそうな、さわやかな笑顔を浮かべる金子は、見れば見るほど、見栄えの整った男だ。

意志の強そうな眉と、すっと通った鼻梁。日本人男性の平均身長よりも十センチ近く高そうな細身の長身に、いつも清潔でシンプルなシャツとネクタイを、センス良く着こなしている。

それだけだと整いすぎて近寄りがたい印象だけど、少し明るめのサラサラの髪と、色素の薄い茶色の瞳が彼の印象を柔らかくし、さらに誰に対しても屈託なく向けられるさわやかな笑顔が加わると、完全無欠の王子様になる。

明るくて話し上手で顔もいい。
三年前に新栄ハウジングに転職してきた金子は、あっという間に会社に馴染み、上司からは可愛がられ、後輩からは慕われている。

若干二十八歳にして高額の物件を扱う営業一課で一番の成績を収めるほど仕事のできる男となれば、光栄ハウジングの全女子社員のアイドル的な存在になるのも当然だ。


ただし、その女子社員の中に、私は含まれないが。
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