腹黒王子に秘密を握られました
「お前、なに涙ぐんでんの?」
「ごめんなさい。ちょっと拓斗くんがかわいすぎて」
呆れる金子に、慌てて目尻をぬぐいながらかぶりを振る。
「彼氏がいるのに他の男に夢中なんて、妬けるな」
「な……っ!」
耳もとで低く囁かれ、思わず飛び上がった。
彼氏ってフリだけだし、子供相手に嫉妬するなんて大人げなさすぎるし、色々突っ込むところ多すぎだ。
そう思って金子の顔を見上げると、意地の悪い微笑み。
なんだからかわれてたのかと、すぐに冷静になる。
「商談は、どうでした?」
「ぼちぼちだな。今年のはじめに出来たばかりのマンションで、物件自体は悪くない。だけど子供もいるし、実際の使い方次第でコンディションが悪ければもうちょっと値が落ちるかもしれないってのは伝えてある」
「拓斗くん、あんまり乱暴な子じゃないし、そんなに傷み具合を心配することはないと思いますけど」
「そっか。じゃあうちに任せてくれるといいんだけどな」
金子はそう言いながら、パソコンで近隣の物件の価格帯をチェックする。
学校もスーパーも近く、立地条件もよさそうだ。