腹黒王子に秘密を握られました
 

設置されたゴミ箱にペットボトルを入れようとして、中にアルミ缶が混じっているのに気が付いた。

誰かが適当に突っ込んだんだ。
すぐ横に缶用のゴミ箱もちゃんとあるのに、だらしないなぁ。

どうせ休憩時間暇だし、ちゃんと仕訳しようかな。

そう思って腕まくりをしてゴミ箱の蓋を開ける。

すると、その様子を見た他部署の事務の女の子がヒソヒソ話しているのが聞こえてきた。


「なにあれ、イイ人アピールしてむかつく」

「清掃のおばちゃんくるのに、わざわざゴミの仕分けするって偽善っぽいよね」

「どうせ、私はよく気の利くいい女ですよーって、社内の男に見せつけたいんでしょ?」

「さすが男好き。普通、男にモテたいからって、そんなことまでしないよねー」

小さな囁きのはずなのに、悪意のこもった言葉はどうしてこんなにハッキリ届いてしまうんだろう。
でも、中断するのも癪で、ムキになってゴミの仕分けをしていると、

「偽善とは違うんじゃない?」

という声が飛んできた。


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