腹黒王子に秘密を握られました
自分の心の声とは正反対の、一ミリのほころびも無い穏やかな笑顔を向けて、会話を終了させる。
相手を不快にさせず角を立てないように会話を切り上げたい時は、これに限る。
YESともNOとも取れる微妙な角度で小首を傾げ、口端を完璧な角度で引き揚げ、視線はまっすぐに相手にむける。
視線が合った瞬間、少しだけ視線を伏せがちにそらせば、大抵相手が黙り込んで会話は終了してくれる。
これは本音を隠して生きてきた十数年、他人に必要以上に踏み込まれたくない一心で、私が産み出した技だ。
案の定、金子も口を閉ざして黙り込む。
よっしゃ。帰ろう。帰ろう。さっさと帰ろう。
今の会話のせいで、二分も時間をロスしてしまった。
今日は一分一秒無駄にできないってのに。