腹黒王子に秘密を握られました
その声に女の子たちが慌てだす。
「友野さんのしてることは偽善じゃないし、なにもしないで見てるだけの奴に非難される筋合いもないと思うけど?」
口元に笑顔を浮かべながら、でも冷めた視線で女の子たちを見るのは、金子敦。
憧れのイケメンに冷たい目で見られ、ふてくされた女の子たちは顔を見合わせ無言でその場を去って行った。
「金子さん。爽やか王子の皮がはがれかけてますよ」
表面上はいつも穏やかな金子が、女の子にあんな冷たい言い方するなんて珍しい。
「自分の彼女が苛められてるんだから、守ってもいいだろ」
「別に、苛められてませんけど」
「そう?」
金子は首を傾げて笑ながら、自動販売機でカフェオレを買う。
男のクセにカフェオレなんだ。
事務所でコーヒーを出す時はいつもブラックだったけど、砂糖とミルクも出した方がいいのかな。
なんてゴミを仕分けながら思っていると、買ったばかりのカフェオレを目の前に差し出された。
「はい、やる」
「いや、いらないです」
「えー、なんで」
「さっきお茶飲んだばっかりなんで、喉乾いてないです」
「……かわいくねぇ。せっかく、ご褒美あげようと思ったのに」
「ご褒美?」
ずっと差し出されたままのカフェオレを仕方なく受け取りながら首を傾げる。
なにかご褒美をもらうようなこと、した覚えはないけど。