腹黒王子に秘密を握られました
「あ、友野さん!」
バッグを持った私に、さらに話しかけてくる金子。
だから、しつこいんだよ。なんなんだよお前。
「今日さ、二課の相楽さんたちと一緒にご飯を食べに行こうって誘われてるんだけど、友野さんもどう?」
さすが、誰にでも分け隔てなく優しい、完全無欠の王子様。
普段から女子社員とあまり接点の無い私を気遣って、わざわざ食事に誘ってくれたんだろう。
だがしかし! 大きなお世話だ!
金子敦とその取り巻きの女子と一緒に食事なんて、ムリムリムリムリ。絶対いやだ。
賃貸物件を扱う営業二課の女子力高い女の子たちの中に混じったら、呼吸もろくに出来やしない。
しかも事務の相楽真子なんて、異性を恋愛対象か否か、同性を自分よりモテるかどうかでしか判断しない、典型的恋愛脳の女子じゃないか。
私が最も苦手とする人種だ。
どうせ誰が金子を射止めるか周りの女子を牽制しながら、おしゃれなお店で聞いた事も無いカタカナの名前の料理やお酒をたしなむんでしょ?
そんな苦痛な時間にお金を払うなら、コンビニのお弁当で、いや一個百円のカップラーメンの方がずっといい。
それに誰に対しても笑顔を向ける優しいこの男のことが、うさんくさくて私は苦手だった。