腹黒王子に秘密を握られました
『バカな娘め。アニメはこっちでも放送されるし、週に一回三十分テレビの前にいるだけなんだから、婚活を拒否する理由にはなりません』
「残念ながらそちらでは一週遅れの放送になるのです。巷の仲間たちがアニメを見て滾っているのを一週間も指をくわえて我慢するなんて拷問には耐えられませんし、あなたの娘は週三十分テレビの前で座っていて満足するような、ぬるい腐女子ではありません」
『……なに?』
「アニメ化に伴う様々なキャラクターグッズ、イベント、コラボ商品。それらの全てにお金をつぎこんで公式を支えるのが私の喜びです。ゲームにドラマCD、DVDに雑誌。ゲーセンの景品からガチャガチャ。地方のご当地コラボグッズをゲットするためにあちこち旅をし、映画が公開されれば一日映画館にこもり、何度でもチケットを買うのです。公式は金にならないと悟るとすぐに手を引きますが、商売になると分かれば私の大好きなキャラクターが様々な展開を見せてくれるのです。それを支えるのが私の幸せなのです」
『馬鹿者。二次元にいくらつぎこんでも、交際も結婚もできないどころか、奴らに指一本触れることもできないということに、そろそろ気づきなさい』
「そんなことは分かってます! それでも愛しい人に尽くさずにいられない、バカな娘だと諦めてください」
いつものように電話で親子喧嘩をしていると、隣から、ぶふぉっとなにかが吹き出す音が聞こえた。