腹黒王子に秘密を握られました
「あー、お前、おもしろすぎ……っ」
ハッとして振り向くと、ゲラゲラと腹を抱えて笑う金子。
しまった、ついお母さんのペースに乗せられて、こいつがいるのを忘れていた。
『ん? 誰の笑い声?』
金子の爆笑が電話の向こうまで届いたのか、お母さんが不思議そうに聞いてくる。
「ええと、それは……」
焦る私を見て、ようやく笑いが落ち着いてきた金子は、目尻に浮かんだ涙をぬぐいながらこちらに手を伸ばしてきた。
「かして。俺も話したい」
「はぁ?」
話すって、うちのお母さんと? 一体何を話すつもりだよ。
ぽかんとしているうちに、私の手の中からスマホを取あげて、こほんと小さく咳払いをしてから耳に当てた。
「もしもし、突然すいません」
さっきまで爆笑してたくせに、今は完璧王子の仮面をつけ人のよさそうな声を出す金子。
そのうさんくさい爽やかな笑顔を睨んでいると、とんでもないことを言いだした。
「同じ会社の同僚で、莉央さんとお付き合いさせていただいてる、金子といいます」
「はぁぁぁぁっ!?」
なに言ってくれちゃってんの、こいつ!
人の親にまで交際宣言とか、頭おかしいんじゃないのっ!?