腹黒王子に秘密を握られました
「ちょっと金子さん、どういうつもりですか!」
「んー?」
車の窓を少し開け、煙草に火を付け微かに目を細める。
「楽しそうだから」
「はぁ?」
「お前の話聞いてたら、楽しそうな家族でうらやましくなった。きっとお前の家の柱は、いっつも笑い声を聞いてきた、あたたかい柱なんだろうなって」
「ちゃんと今の会話聞いてました? うちの柱は怒鳴り声と罵声ばかり聞いてると思いますよ」
「そう? いい家族じゃん」
微かに肩を上げ、こちらをみて微笑む。
じゃあ、金子さんの家族などんな感じなんですか?って聞きたくなったけど、なんとなくプライベートに踏み込んじゃいけないような気がして、私は黙ってうつむいた。
「火曜、ちゃんと予定開けとけよ」
そう言われ、あぁ、この人は本気で私の実家にくるつもりなんだと肩を落とす。
「映画行きたかったのに……」
「週末に公開なら、土日に仕事終わってからレイトショーで見ればいいだろ」
「もちろんそれも行きますけど、入場者特典があるんですよ」
「は?」
「ランダムで缶バッチが当たるんです。それが欲しいので火曜日はびっちり映画館に籠ろうと思ってたのに」
「缶バッチが欲しくて、同じ映画を何度も見るのか?」