腹黒王子に秘密を握られました
「もちろん、大好きなアニメだから、何度でも映画を見たいってのが大前提ですけどね」
「それにしても、一日で何度も同じ映画を見るなんて、頭おかしくならないか?」
「確かに、萌え滾りすぎて走り出したくなりますよね」
「……すげぇなお前」
金子は呆れたようにため息をつく。
「わかった。じゃあ火曜の朝一で映画を見てから、新幹線に乗ってお前の実家に行くぞ」
「えー、せめて二回」
「俺も一緒に見てやるから。そうしたらその缶バッチかなんか、ふたつ貰えるんだろ」
「まじすか」
「いやなのかよ」
「いや、金子さんがアニメの映画なんて、絶対見ないと思ってたから」
リア充でイケメンの王子が、私みたいな腐女子と一緒に映画を見てくれるなんて、意外すぎる。
「別にアニメも漫画もキライじゃねーよ。スラダン世代だし、昔からスポーツ漫画はけっこう好きだった」
「へぇ……」
「じゃ、そろそろ会社に戻るか。シートベルトちゃんとしろよ」
金子は短くなった煙草を灰皿に押し付けると、そう言いながらハンドルを握った。