腹黒王子に秘密を握られました
「今も彼氏が帰国してるんでしょ? 今週の日曜も、絶対譲れない用事があるって、ずいぶん前から希望休出してたし。それに、最近やけに寝不足そうだし?」
というセクハラを含んだ言葉に心の中でツバを吐く。
寝不足は事実だけど、先輩が想像するような充実した夜は一切送っておりません。
「すいません。図々しく日曜に休みをとってしまって」
セクハラ部分は聞こえなかったことにして、申し訳なさそうに頭を下げる。
「いいよいいよ。せっかく久しぶりに彼氏と過ごせるんだから、気にしないで休みな」
基本接客業の不動産会社の定休日は、日曜祝日ではなく毎週水曜と隔週の火曜だ。
既婚者が子供のイベントで日曜に希望休を出すことはあっても、私みたいな独身OLが堂々と日曜を休みたいというのは、なかなか言い出しにくいのが実情だ。
だから、こんな噂がたって、用事を勝手に推測してくれるのは正直助かる。
私は否定も肯定もせずに、ただ恥ずかしそうにはにかんでみせた。
それだけで十分だ。あとは勝手に想像してくれる。
きっと来週の月曜には、どんなラブラブな時間を過ごしたの? なんて、またセクハラまがいな質問をされるんだろうけど、気兼ねなく日曜日を休めるなら、そのくらい笑って許せる。
「それでは、お先に失礼します」
丁寧なお辞儀をして、私は会社をあとにした。