腹黒王子に秘密を握られました
古い引き戸の玄関の中に入ると、軽トラが止められるほど広い土間。
そこにはナタやのこぎり、チェーンソーやヘルメットなど林業を営む父の仕事道具がずらりと並び、ほこりと古い油の、懐かしい匂いがする。
「すごい、立派な家だな」
「古いだけですよ」
代々この土地で林業を営んでいた父の家系。
元々はおじいちゃんが建てた納屋だったという昔い家屋を、お父さんが民家として改装したらしい。
土間から見える廊下から居間へと、無垢の木のフローリングが綺麗な木目を見せて並んでいる。
「さすが、木の使い方が贅沢だな」
「査定しないでくださいね」
職業病なのかあちこち気になる様子の金子にくぎをさすと、肩をすくめて苦笑いされた。
パタパタと忙しない足音が聞こえ、父を引き連れて母が玄関先に戻ってきた。
「ほらお父さん、東京のイケメン」
「ほう、これが東京のイケメンか」
いや、あんたたち、お客様を上野のパンダみたいな感覚で物珍しがらないで。