腹黒王子に秘密を握られました
 




「この子は昔っから部屋にこもって漫画ばっかり読んでてねー」

うるさいよ。

「人形に向かって話しかけてるのを聞いた時は、さすがに心配になったわ」

ほっといて。

「同級生の男になんて見向きもせずに、漫画とアニメにばっかり夢中でね」

悪いかよ。

「部屋の中なんて狂気の沙汰よ」

なんと、失礼な。

「片づけると怒るから今もそのままにしてるんだけど、キラッキラしたポスターとフィギュアだらけで、落ち着かないったら」

おい、余計なことを言うな。

「へぇ、あとで見せてもらってもいいですか?」

バカヤロウ。
お前のようなよそ者を我が聖域に入れるわけがないだろうがぁっ!

「……ってか、さっきからなんで私の悪口大会になってんのよっ!!」

ペラペラと人の悪口を言い続けるお母さんに、さすがに親孝行で穏やかな私だって堪忍袋の緒がぶち切れる。

「あら、悪口じゃなくて全部本当のことでしょ? 彼氏の前だから、一丁前に照れてんの?」

「うっさい! 照れてねーわ!」

「莉央、顔が真っ赤ですけど?」

「くっ……!」

睨み合う私とお母さんを横目に、お父さんがのんびりと日本酒の入ったお猪口に口をつける。
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