筆舌に尽くし難い。
あたしが勤める、ファッションデザインの事務所は基本的に2人組になってひとつの案件をこなすシステムになっている。その方がデザインの良し悪しを討論も出来るし作業効率も上がるし基本的に単独で作業するデザイナーたちの親密度も上がるという理由からだ。
通常であればひとつの案件が終えるごとにパートナーはシャッフルされるのだけれども、入社したばかりのあたしはどういったわけか毎回と言っていいほどひとつの上の先輩 宮路さんとばかり組まされている。
先輩は見惚れるような、女性の心がわかるようなそんな素敵なデザインを数々生み出しては数々の賞に受賞したり更には雑誌やテレビのインタビューやらにも幾つも取り上げられ業界からも期待と有望されている。
そして天狗になるどころか聖人君子ではと揶揄されるような菩薩のような人当たりで、誰も彼も先輩を羨望と尊敬を持って接している。
今日だってそう、ウェディングドレスを一から作りたいという花嫁様からのリクエストをイメージ通り描き上げたけれどまだ一手間欲しいと先輩からヘルプコールがかかり事務所ではなく、その近隣にある先輩が独り住まいをしているマンションで話し合いたいと呼び出されたものだ