今のままで
家族
妊娠7ヶ月お腹も目立ち始めて体が少し重い。
つわり中コーヒーの匂いも辛かったのでお店は優里さんに手伝ってもらっていたが、安定期に入ってつわりも楽になったのでお店の方にも出るようになった。
明日から郁斗が映画の撮影に約3ヶ月間イタリヤに行く。
郁斗はこのところ毎日『本当に大丈夫か?』と聞く。
今朝もまた…
「やっぱり…仕事」
「今更、映画の仕事キャンセル出来ないでしょ?大丈夫!お義母さんも様子見に来てくださるって言ってるし、9ヶ月になったらお義母さんのお宅にお世話になるから、郁斗は何も心配しないでお仕事に行って」
「無理するなよ?絶対だぞ!?何かあったらすぐにお袋に連絡しろよ?本当は俺にって言いたいけど直ぐには戻れないから…」
「はいはい、分かってます。それより荷物大丈夫?」
「荷物は大丈夫だけど…俺が大丈夫じゃない…」
郁斗はお腹を気にしながらそっと抱いてくれる。
「俺、3ヶ月間も美寿々に会えないなんて耐えられないよ…」
「郁斗…私も寂しいよ…電話してね?」
「あぁ毎日する」
今日はお義母さんを呼んで家で食事を一緒にする事にした。
「お袋、美寿々を頼むよ?」
「分かってますよ!もう何度目?」とお義母さんは呆れている。
「本当、お義母さんがみえてから5回は言ってるよ?」
「俺が居ないんだからお袋に頼むしかないからさ…」
お義母さんが帰られるまで何度言っていた事か?
よるベットに入ると今度はお腹の赤ちゃんに話しだす。
「おい、聞いてるか?パパが居ない間ママを頼むぞ?そして元気に生まれて来てくれ」
郁斗は私のお腹に手を当てて何度も赤ちゃんに頼んでいた。
「郁斗、もう行かなきゃ飛行機に乗り遅れるよ!?」
空港まで送ると言ったが、郁斗が『帰りが心配だから』と言うのでマンションの下で見送る事になった。
「本当に大丈夫か?何かあったらすぐにお袋に…」
郁斗がいつまでも心配してるから私は唇で郁斗の唇を塞いだ。
「行ってらっしゃい」
「あぁ行ってきます」
郁斗は山下さんとタクシーで空港へ向かった。
あぁ行っちゃった…
撮影が終わるまで帰ってこないでと行ったけどやっぱり寂しい。
ても「あなたが居るから頑張るよ」とお腹に手を当て話しかける。
「郁斗、何時の飛行機?」
「14時の飛行機です」
「イタリヤかぁ?私も行っちゃおうかしらいい男探しに」
ミチルさんは笑ってるけど本当に行っちゃうんじゃないかしら?
「美寿々ちゃん、何かあったら電話しなさい。すぐに飛んで来てあげるから。寝てる時も携帯は枕元に置いとくからね?」
「有難うございます」
夜になって郁人から無事に着いたと電話があった。
郁斗は毎日電話とメールをくれた。
『大丈夫か?変わりないか?無理するなよ?会いたい、愛してるよ』
いつも同じ内容。
でもすごく嬉しい。
郁人に愛されてるって実感する。
電話の最後はお腹に電話を当てて郁斗の声をお腹の赤ちゃんに聞かせる。
『パパもママもおまえに会えるのを楽しみにしてるぞ元気に生まれて来てくれ』と郁斗は話す。
予定日を1週間過ぎた。
初産は予定日より遅くなると聞いているがまだ生まれる兆候はない。
「よっぽどお腹の中が居心地いいのかしら?」とお義母さんが言う。
「でもそろそろ出て来てくれないと…」
「そうね?赤ちゃんが大きくなり過ぎると生むとき大変だものね?」
「そうらしいですよね?ウォーキングしてるんですけどね?」
病院の先生に少しウォーキングをしたらいいと言われて、毎朝ミチルさんに付き合ってもらってる。
『体が資本だから私もウォーキングするわ』と言ってくれたのだ。
本当に皆に助けられている。
いつものようにミチルさんに付き合ってもらってウォーキングをしてお店に出ていると…
9時頃になって少しお腹が痛いでもすぐに治まったから陣痛じゃないのかな?
まぁどちらにしても支度だけしときますか?
「赤ちゃんママ頑張るからね?」とお腹を擦る。
それから何度か痛みが来るようになった。
夕方お腹を擦っていると
「美寿々さん大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
そろそろ連絡だけしようかな?
「咲ちゃんミチルさんとお義母さんに電話してくれる?」
「は、はい!大丈夫ですか?えっとえっと…」
「咲ちゃん、落ち着いて、まだまだ生まれないから」
お義母さんとミチルさんは直ぐに来てくれた。
「ミチルさんごめんなさいお仕事ありますよね?お義母さんが来てくれたので…」
「何言ってるの?お店の事は大丈夫よ!何があってもいいように私ずっと禁酒してたのよ、寿の代わりに私が車で送るからね?」
禁酒してくれてたなんて…
お父さんも生きていたら同じ様に禁酒してくれてただろうな…
でもミチルさんお酒飲まないとお仕事にならないのに…
「ミチルさん有難うございます。宜しくお願いします」
病院に電話をしたが10分間隔になってから来るようにと言われた。
ミチルさんは私が痛がると「大丈夫?」とオロオロしている。
そのてん経験者のお義母さんは落ち着いたものだ。
「初産は時間がかかるから生まれるのは明日ね?」
「えー明日ですか?」
マジですか?時間がかかるとは聞いてますが明日って…
咲ちゃんも心配して帰らずに居てくれた。
「咲ちゃん、ごめんね?心配かけて、まだまだらしいから気をつけて帰って明日からまた、私居ないけどお店宜しくお願いします」
「はい、頑張ってくださいね?」
「うん」とピースをして見せた。
「さぁ腹が減っては戦は出来ぬ。美寿々ちゃん、陣痛の合間に食べた方がいいわ、先が長いから」
お義母さんがおにぎりを作ってくれた。
食べやすいようにと小さめのおにぎりを握ってくれた。
陣痛の間隔も短くなって来て腰の痛みも出てきた。
お義母さんは私の腰を擦ってくれる。
「郁人生む時2日かかったのよ?」
「えー2日ですか?」
「そう、陣痛の間隔も10分間隔になったから病院に行ったら陣痛が止まちゃったの…で、一度家に帰りなさいって言われて帰ったら、直ぐに痛み出して病院に行ったらまた…」
「え?また…」
「そう、また家に帰ったわ」とお義母さんは笑う。
「で、またすぐに痛み出して今度は暫く家に居たのよ、だって病院に行ってまたね…」と苦笑する。
確かに…
「そしたら破水しちゃって慌ててタクシー呼んで病院に行ったら、助産師さんが『頭が出てます』って言うの」
お義母さんは笑っているが、その時はもう…郁斗のお父さんは家を出ていたはず…お義母さん1人で心細かっただろう。
「それからは早かったわ、その頃から他とは違ってたのかしら?」
その頃から違ってた?
「幼稚園の入園の時、『この制服変!僕には似合わない』って言って幼稚園変わったのよ」
「えっー制服の為に?」
「そう、小学校も制服がある学校は嫌だって、毎朝、鏡に30分は向かってたわ」
「だからモデルになったんですね?」
「多分ね?」
お義母さんに郁斗の話を聞いていると陣痛の辛さが和らいでいた。
多分、面白おかしく話して私の気持ちを陣痛から逸らせてくれていたのだろう。
「そろそろ病院に行ってもいい頃ね?」とお義母さんが言う。
気が付けば10分間隔になっていた。
ミチルさんに病院まで送ってもらい診察を受けたが「子宮はまだ開いてないから今日は生まれませんね」と助産師さんに淡々と言われた。
「やっぱり明日ですか?…」
「まぁ気長に行きましょう?」
肩を落としている私にお義母さんが言う。
ミチルさんは『バケモノが居ても他の人の精神的に良くないからと一度帰るわ』と言って帰って行った。
お義母さんはずっと私の腰を擦ってくれていた。
「お義母さん有難うございます。お義母さんも少し休んて下さい」
「大丈夫よ!私ね嬉しいのこうやってあなたの腰を擦ってることが」
「え?」
「あらいやだ、変な意味じゃないのよ!私ね女の子が欲しかったの女同士で色々おしゃべりしたり買い物したりしてみたかったの。男の子は全然相手してくれないから…だから娘が居たらこうしていたと思うのよ。だから、今、とっても幸せなのよ。だから、美寿々ちゃんは私の事は気にしないで良いのよ」
お義母さん…
「お義母さん赤ちゃんと一緒にたくさん出かけましょうね?」
「美寿々ちゃん有難う。楽しみだわ」
8月23日 6時55分 3760㌘ 男の子誕生
私は出血が少し多かったが母子共健康だと聞いたお義母さんは涙を流して喜んでくれた。
「美寿々ちゃん良く頑張ったわね、とっても元気な子よ新生児室で大きな声で泣いてたわ」
翌日から赤ちゃんと同室になったが出血が多かった私は貧血が酷く赤ちゃんのお世話をお義母さんにお願いしていた。
「本当可愛いわ…お婆ちゃんですよ」
お義母さんは本当に嬉しそうに赤ちゃんを見ている。
お母さんも生きていたらこんなふうに喜んでくれただろな…
お義母さんが赤ちゃんを抱いてミルクを飲ませていると突然ドアが開いた。
「美寿々!」大きな声に赤ちゃんがびっくりして泣き出した。
「郁斗!?」
「あぁごめん…泣くなよ…パパだよ、ごめんな驚かせて」
「郁斗撮影終わったの?」
「あぁ、終わった。ミチルさんに連絡もらってさ、撮影終わったその足で空港に向かってキャンセル待で帰って来た」
「荷物は?」
「まだ向こう。山下さんが持って帰って来てくれる」
郁斗はお義母さんに「お袋、俺に抱かせてくれ」と言って赤ちゃんを抱く。
郁斗は「小さいな…」と目を細め私の元へ来ると「美寿々有難う」と額にキスを落とした。
「美寿々、名前なんだけど、寿斗(ひさと)てどうだ?」
「小野寺寿人」お父さんの名前が入ってる。
「うん、いい名前だね」
私達の新しい家族、小野寺寿人…幸せになろうね。
つわり中コーヒーの匂いも辛かったのでお店は優里さんに手伝ってもらっていたが、安定期に入ってつわりも楽になったのでお店の方にも出るようになった。
明日から郁斗が映画の撮影に約3ヶ月間イタリヤに行く。
郁斗はこのところ毎日『本当に大丈夫か?』と聞く。
今朝もまた…
「やっぱり…仕事」
「今更、映画の仕事キャンセル出来ないでしょ?大丈夫!お義母さんも様子見に来てくださるって言ってるし、9ヶ月になったらお義母さんのお宅にお世話になるから、郁斗は何も心配しないでお仕事に行って」
「無理するなよ?絶対だぞ!?何かあったらすぐにお袋に連絡しろよ?本当は俺にって言いたいけど直ぐには戻れないから…」
「はいはい、分かってます。それより荷物大丈夫?」
「荷物は大丈夫だけど…俺が大丈夫じゃない…」
郁斗はお腹を気にしながらそっと抱いてくれる。
「俺、3ヶ月間も美寿々に会えないなんて耐えられないよ…」
「郁斗…私も寂しいよ…電話してね?」
「あぁ毎日する」
今日はお義母さんを呼んで家で食事を一緒にする事にした。
「お袋、美寿々を頼むよ?」
「分かってますよ!もう何度目?」とお義母さんは呆れている。
「本当、お義母さんがみえてから5回は言ってるよ?」
「俺が居ないんだからお袋に頼むしかないからさ…」
お義母さんが帰られるまで何度言っていた事か?
よるベットに入ると今度はお腹の赤ちゃんに話しだす。
「おい、聞いてるか?パパが居ない間ママを頼むぞ?そして元気に生まれて来てくれ」
郁斗は私のお腹に手を当てて何度も赤ちゃんに頼んでいた。
「郁斗、もう行かなきゃ飛行機に乗り遅れるよ!?」
空港まで送ると言ったが、郁斗が『帰りが心配だから』と言うのでマンションの下で見送る事になった。
「本当に大丈夫か?何かあったらすぐにお袋に…」
郁斗がいつまでも心配してるから私は唇で郁斗の唇を塞いだ。
「行ってらっしゃい」
「あぁ行ってきます」
郁斗は山下さんとタクシーで空港へ向かった。
あぁ行っちゃった…
撮影が終わるまで帰ってこないでと行ったけどやっぱり寂しい。
ても「あなたが居るから頑張るよ」とお腹に手を当て話しかける。
「郁斗、何時の飛行機?」
「14時の飛行機です」
「イタリヤかぁ?私も行っちゃおうかしらいい男探しに」
ミチルさんは笑ってるけど本当に行っちゃうんじゃないかしら?
「美寿々ちゃん、何かあったら電話しなさい。すぐに飛んで来てあげるから。寝てる時も携帯は枕元に置いとくからね?」
「有難うございます」
夜になって郁人から無事に着いたと電話があった。
郁斗は毎日電話とメールをくれた。
『大丈夫か?変わりないか?無理するなよ?会いたい、愛してるよ』
いつも同じ内容。
でもすごく嬉しい。
郁人に愛されてるって実感する。
電話の最後はお腹に電話を当てて郁斗の声をお腹の赤ちゃんに聞かせる。
『パパもママもおまえに会えるのを楽しみにしてるぞ元気に生まれて来てくれ』と郁斗は話す。
予定日を1週間過ぎた。
初産は予定日より遅くなると聞いているがまだ生まれる兆候はない。
「よっぽどお腹の中が居心地いいのかしら?」とお義母さんが言う。
「でもそろそろ出て来てくれないと…」
「そうね?赤ちゃんが大きくなり過ぎると生むとき大変だものね?」
「そうらしいですよね?ウォーキングしてるんですけどね?」
病院の先生に少しウォーキングをしたらいいと言われて、毎朝ミチルさんに付き合ってもらってる。
『体が資本だから私もウォーキングするわ』と言ってくれたのだ。
本当に皆に助けられている。
いつものようにミチルさんに付き合ってもらってウォーキングをしてお店に出ていると…
9時頃になって少しお腹が痛いでもすぐに治まったから陣痛じゃないのかな?
まぁどちらにしても支度だけしときますか?
「赤ちゃんママ頑張るからね?」とお腹を擦る。
それから何度か痛みが来るようになった。
夕方お腹を擦っていると
「美寿々さん大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
そろそろ連絡だけしようかな?
「咲ちゃんミチルさんとお義母さんに電話してくれる?」
「は、はい!大丈夫ですか?えっとえっと…」
「咲ちゃん、落ち着いて、まだまだ生まれないから」
お義母さんとミチルさんは直ぐに来てくれた。
「ミチルさんごめんなさいお仕事ありますよね?お義母さんが来てくれたので…」
「何言ってるの?お店の事は大丈夫よ!何があってもいいように私ずっと禁酒してたのよ、寿の代わりに私が車で送るからね?」
禁酒してくれてたなんて…
お父さんも生きていたら同じ様に禁酒してくれてただろうな…
でもミチルさんお酒飲まないとお仕事にならないのに…
「ミチルさん有難うございます。宜しくお願いします」
病院に電話をしたが10分間隔になってから来るようにと言われた。
ミチルさんは私が痛がると「大丈夫?」とオロオロしている。
そのてん経験者のお義母さんは落ち着いたものだ。
「初産は時間がかかるから生まれるのは明日ね?」
「えー明日ですか?」
マジですか?時間がかかるとは聞いてますが明日って…
咲ちゃんも心配して帰らずに居てくれた。
「咲ちゃん、ごめんね?心配かけて、まだまだらしいから気をつけて帰って明日からまた、私居ないけどお店宜しくお願いします」
「はい、頑張ってくださいね?」
「うん」とピースをして見せた。
「さぁ腹が減っては戦は出来ぬ。美寿々ちゃん、陣痛の合間に食べた方がいいわ、先が長いから」
お義母さんがおにぎりを作ってくれた。
食べやすいようにと小さめのおにぎりを握ってくれた。
陣痛の間隔も短くなって来て腰の痛みも出てきた。
お義母さんは私の腰を擦ってくれる。
「郁人生む時2日かかったのよ?」
「えー2日ですか?」
「そう、陣痛の間隔も10分間隔になったから病院に行ったら陣痛が止まちゃったの…で、一度家に帰りなさいって言われて帰ったら、直ぐに痛み出して病院に行ったらまた…」
「え?また…」
「そう、また家に帰ったわ」とお義母さんは笑う。
「で、またすぐに痛み出して今度は暫く家に居たのよ、だって病院に行ってまたね…」と苦笑する。
確かに…
「そしたら破水しちゃって慌ててタクシー呼んで病院に行ったら、助産師さんが『頭が出てます』って言うの」
お義母さんは笑っているが、その時はもう…郁斗のお父さんは家を出ていたはず…お義母さん1人で心細かっただろう。
「それからは早かったわ、その頃から他とは違ってたのかしら?」
その頃から違ってた?
「幼稚園の入園の時、『この制服変!僕には似合わない』って言って幼稚園変わったのよ」
「えっー制服の為に?」
「そう、小学校も制服がある学校は嫌だって、毎朝、鏡に30分は向かってたわ」
「だからモデルになったんですね?」
「多分ね?」
お義母さんに郁斗の話を聞いていると陣痛の辛さが和らいでいた。
多分、面白おかしく話して私の気持ちを陣痛から逸らせてくれていたのだろう。
「そろそろ病院に行ってもいい頃ね?」とお義母さんが言う。
気が付けば10分間隔になっていた。
ミチルさんに病院まで送ってもらい診察を受けたが「子宮はまだ開いてないから今日は生まれませんね」と助産師さんに淡々と言われた。
「やっぱり明日ですか?…」
「まぁ気長に行きましょう?」
肩を落としている私にお義母さんが言う。
ミチルさんは『バケモノが居ても他の人の精神的に良くないからと一度帰るわ』と言って帰って行った。
お義母さんはずっと私の腰を擦ってくれていた。
「お義母さん有難うございます。お義母さんも少し休んて下さい」
「大丈夫よ!私ね嬉しいのこうやってあなたの腰を擦ってることが」
「え?」
「あらいやだ、変な意味じゃないのよ!私ね女の子が欲しかったの女同士で色々おしゃべりしたり買い物したりしてみたかったの。男の子は全然相手してくれないから…だから娘が居たらこうしていたと思うのよ。だから、今、とっても幸せなのよ。だから、美寿々ちゃんは私の事は気にしないで良いのよ」
お義母さん…
「お義母さん赤ちゃんと一緒にたくさん出かけましょうね?」
「美寿々ちゃん有難う。楽しみだわ」
8月23日 6時55分 3760㌘ 男の子誕生
私は出血が少し多かったが母子共健康だと聞いたお義母さんは涙を流して喜んでくれた。
「美寿々ちゃん良く頑張ったわね、とっても元気な子よ新生児室で大きな声で泣いてたわ」
翌日から赤ちゃんと同室になったが出血が多かった私は貧血が酷く赤ちゃんのお世話をお義母さんにお願いしていた。
「本当可愛いわ…お婆ちゃんですよ」
お義母さんは本当に嬉しそうに赤ちゃんを見ている。
お母さんも生きていたらこんなふうに喜んでくれただろな…
お義母さんが赤ちゃんを抱いてミルクを飲ませていると突然ドアが開いた。
「美寿々!」大きな声に赤ちゃんがびっくりして泣き出した。
「郁斗!?」
「あぁごめん…泣くなよ…パパだよ、ごめんな驚かせて」
「郁斗撮影終わったの?」
「あぁ、終わった。ミチルさんに連絡もらってさ、撮影終わったその足で空港に向かってキャンセル待で帰って来た」
「荷物は?」
「まだ向こう。山下さんが持って帰って来てくれる」
郁斗はお義母さんに「お袋、俺に抱かせてくれ」と言って赤ちゃんを抱く。
郁斗は「小さいな…」と目を細め私の元へ来ると「美寿々有難う」と額にキスを落とした。
「美寿々、名前なんだけど、寿斗(ひさと)てどうだ?」
「小野寺寿人」お父さんの名前が入ってる。
「うん、いい名前だね」
私達の新しい家族、小野寺寿人…幸せになろうね。