今のままで
初恋の人
9時になるとちょっと落ち着くのでバイトの咲ちゃんにお願いして休憩を取らせてもらう。
「咲ちゃんお願いね?何かあったら呼んでね?」
「はーい」
さてとまず洗濯しなきゃと郁斗の部屋の鍵をそっと開け玄関に置いてある洗濯物を持って再び鍵を閉める。
郁斗の部屋は最上階の私の部屋の隣で二戸しかないので他の人に会うことはない。
洗濯機を回してる間にお昼ご飯の用意をする。
今日は豆腐ハンバーグ、根野菜の味噌汁はランチポットに入れそれと雑穀米でおにぎりを作る。
「ヨシ!出来た」
洗濯物を干してコーヒーを一杯飲む。
「あー美味しいー幸せ…」
さぁ郁斗にお昼ごはんを届けて店に下りますか?
郁斗の部屋に入ると郁斗はソファーで寝ていた。
「もうこんなとこで寝て疲れ取れないのに」
寝室から毛布を持って来て掛けてあげる。
「ん…美寿々?」
「ごめん起こした?寝室に行って寝たら?」
「美寿々一緒に寝よ?」と腕を掴まれる。
心臓がドクンと跳ねる。
「冗談言わないで…お昼ごはんテーブルに置いてあるからね!ちゃんと食べるんだよ?」と郁斗の手を払い部屋を出ていく。
「人の気も知らないで…」
郁斗とは幼なじみで私の初恋の人。
そして今も…
郁斗は小さい頃から人気者でいつも可愛い女の子が周りを取り囲んでいた。
自分の気持ちを伝えて気まずくなるのが嫌で伝えた事は無い。
これからも伝えるつもりは無い…
郁斗は小野寺コーポレションの社長の甥でゆくゆくは会社を継ぐ事になるかも知れない人。
会社を継がなくてもモデルとして海外からも指名される程今や時の人。
そして今は俳優としても活躍してる。
そんな郁斗に私なんかが釣り合うはずがない…
私は本当の両親を知らない。
生まれて直ぐに木下家に養女に迎えられた。
その事を知ったのは大学に入る時戸籍謄本を取り寄せ始めて知った。
両親に聞いたが私達の娘だからと何も教えてくれなかった。
それから私は両親と一定の距離を置くようになり、隣の部屋が空いていたので両親に無理を言って一人で生活をさせてもらった。
講義のない時間はバイトに明け暮れて私は家賃を払うと言って両親に悲しい顔をさせていた。
両親は今までと変わらず接してくれていたのに…
その両親が事故で亡くなった時、呆然と立ち涙も出なかった。
何もする気がしなくて誰とも会いたくなくて家に閉じこもっていた。
そんな時郁斗に『お前何やってるの?そんな事しててどうなる?おじさんもおばさんも心配してるぞ?自分の娘がこんなんじゃ成仏できないってな!』
『自分の娘?』
『あぁお前は木下寿と木下恵美の娘、木下美寿々だろ?自分の名前知らないのか?ちゃんとおじさんもおばさんもお前を実の娘だと言ってるじゃないか?』
美寿々…私の名前にはお父さんの寿とお母さんの美が入ってる…
私は木下美寿々。
そうだった両親はずっと娘として愛してくれていた。
涙が溢れて止まらなかった。
『お父さん…お母さん…ごめんなさい…』
私はその時両親を亡くして始めて涙を流した。
郁斗の前で涙が枯れるまで泣いた。
郁斗は『これからは俺が側に居るから』と私の背中をさすってくれていた。
それから郁斗はいつも私の側にいてくれた。
私が両親の部屋に戻って空いた部屋も賃貸にすると言うと『俺が借りる』と言い約束通りいつも側にいてくれた。
嬉しい時も、悲しい時も…
そう幼なじみとして…
なにも望んじゃいけない。
今のままでいい…
いつか郁斗に寄り添う人が出来るまで…
そうこれが私のいる場所なのだからと自分に言い聞かせる。
「咲ちゃんお願いね?何かあったら呼んでね?」
「はーい」
さてとまず洗濯しなきゃと郁斗の部屋の鍵をそっと開け玄関に置いてある洗濯物を持って再び鍵を閉める。
郁斗の部屋は最上階の私の部屋の隣で二戸しかないので他の人に会うことはない。
洗濯機を回してる間にお昼ご飯の用意をする。
今日は豆腐ハンバーグ、根野菜の味噌汁はランチポットに入れそれと雑穀米でおにぎりを作る。
「ヨシ!出来た」
洗濯物を干してコーヒーを一杯飲む。
「あー美味しいー幸せ…」
さぁ郁斗にお昼ごはんを届けて店に下りますか?
郁斗の部屋に入ると郁斗はソファーで寝ていた。
「もうこんなとこで寝て疲れ取れないのに」
寝室から毛布を持って来て掛けてあげる。
「ん…美寿々?」
「ごめん起こした?寝室に行って寝たら?」
「美寿々一緒に寝よ?」と腕を掴まれる。
心臓がドクンと跳ねる。
「冗談言わないで…お昼ごはんテーブルに置いてあるからね!ちゃんと食べるんだよ?」と郁斗の手を払い部屋を出ていく。
「人の気も知らないで…」
郁斗とは幼なじみで私の初恋の人。
そして今も…
郁斗は小さい頃から人気者でいつも可愛い女の子が周りを取り囲んでいた。
自分の気持ちを伝えて気まずくなるのが嫌で伝えた事は無い。
これからも伝えるつもりは無い…
郁斗は小野寺コーポレションの社長の甥でゆくゆくは会社を継ぐ事になるかも知れない人。
会社を継がなくてもモデルとして海外からも指名される程今や時の人。
そして今は俳優としても活躍してる。
そんな郁斗に私なんかが釣り合うはずがない…
私は本当の両親を知らない。
生まれて直ぐに木下家に養女に迎えられた。
その事を知ったのは大学に入る時戸籍謄本を取り寄せ始めて知った。
両親に聞いたが私達の娘だからと何も教えてくれなかった。
それから私は両親と一定の距離を置くようになり、隣の部屋が空いていたので両親に無理を言って一人で生活をさせてもらった。
講義のない時間はバイトに明け暮れて私は家賃を払うと言って両親に悲しい顔をさせていた。
両親は今までと変わらず接してくれていたのに…
その両親が事故で亡くなった時、呆然と立ち涙も出なかった。
何もする気がしなくて誰とも会いたくなくて家に閉じこもっていた。
そんな時郁斗に『お前何やってるの?そんな事しててどうなる?おじさんもおばさんも心配してるぞ?自分の娘がこんなんじゃ成仏できないってな!』
『自分の娘?』
『あぁお前は木下寿と木下恵美の娘、木下美寿々だろ?自分の名前知らないのか?ちゃんとおじさんもおばさんもお前を実の娘だと言ってるじゃないか?』
美寿々…私の名前にはお父さんの寿とお母さんの美が入ってる…
私は木下美寿々。
そうだった両親はずっと娘として愛してくれていた。
涙が溢れて止まらなかった。
『お父さん…お母さん…ごめんなさい…』
私はその時両親を亡くして始めて涙を流した。
郁斗の前で涙が枯れるまで泣いた。
郁斗は『これからは俺が側に居るから』と私の背中をさすってくれていた。
それから郁斗はいつも私の側にいてくれた。
私が両親の部屋に戻って空いた部屋も賃貸にすると言うと『俺が借りる』と言い約束通りいつも側にいてくれた。
嬉しい時も、悲しい時も…
そう幼なじみとして…
なにも望んじゃいけない。
今のままでいい…
いつか郁斗に寄り添う人が出来るまで…
そうこれが私のいる場所なのだからと自分に言い聞かせる。