運命の出会いって信じますか?
その言葉に私はきょとんとする。

私のその様子に首を傾げながら、英輔は笑いが止まらない。

「…華も良い大人の女になったな。見違えたよ。」

「私なんて歳を取っただけで、たいしたお手入れもしてないし…。」

私は心配になって自分の頬を撫でる。

会社帰りですぐに夕食の準備を始めたから、化粧だって落ちかけているだろう。

「俺には今の華が一番きれいに見える。俺だけの華だ…。」

もう一度私は英輔の胸に納まる。

しばらくして英輔が言った。

「この格好じゃくつろげない。シャワーを浴びてくるよ。」

「うん。」

私はそう言うスーツ姿の英輔を残してキッチンに向かった。

その私の後姿を見て英輔がかすかに微笑んだ事に、私は気が付かなかった。














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