運命の出会いって信じますか?
「おはようございます、野々村華さん。こないだは会えなかったね。」

営業スマイルなのか、いつもと変わらない人懐っこそうなその笑顔。

私はじろりと彼の顔を見る。

「あの人が野々村華さんの恋人?」

からかうようなその表情は、やはり若い。

「ええ、そうよ。彼がこちらに戻ってきたら結婚するの。」

ムキになって、言わなくても良い事まで自分からしゃべってしまった私。

「ふ~ん。確かに良い男だったね。」

そんな私の焦りは少しも彼には関係ないようだ。

「ねえ。」

彼は荷物を私の横に置いて、代金を出した私の手を掴んだ。

「明日の昼から俺と会ってくれない?」

小銭が玄関に散らばった。

私はその音の方を目で追った。

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