運命の出会いって信じますか?
でも彼の手の力は抜けなかった。

「お金が…。」

そう言いかけた私の手をぐっと彼は引っ張った。

至近距離に迫る彼の顔。

私は顔を背けた。

「何言っているのよ。あなたと会う必要性がないわ。」

私は彼の影を近くに感じて、動けなくなってしまった。

「こっち向けよ。」

「嫌よ。」

強引に引っ張る彼の手。

「痛いわよ。」

そのあまりの力に、思わず顔をしかめた私は手を振り払おうとした。

その瞬間、その勢いに反発した彼は私を抱きしめた。

「…ちょ、ちょっと…。」

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