運命の出会いって信じますか?
気が付くと、私は彼に唇を塞がれていた。

驚きながらも、思いきり抵抗する私。

その事に諦めたように彼は離れた。

ゼイゼイ息をつく私。

そんな私を彼は切なげに見た。

「…毎度…。」

彼はそれだけ言って、そそくさとお金を拾い出した。

そして若者らしく、真っ直ぐに私の目を見た。

「困らせてごめん。でも嘘じゃないから。」

私の唖然とする顔をまだ見つめている彼。

いつもの年上の私をからかう余裕は今の彼からは感じられない。

「とにかく明日時間を取って。」

それだけ言うと、彼は私の返事も聞かずに玄関から出て行った。

まさかの出来事に私は呆然と立ち尽くす。

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