運命の出会いって信じますか?

彼の言葉を頭の中で繰り返していた私は首を傾げた。

「そう、俺も名古屋支社に赴任になった。君…、野々村さんもだろう?」

さっき名乗ったばかりなのに、急に苗字で呼ばれ、ちょっとどぎまぎする。

「私は自宅が名古屋だから。えっと…、あなたも?」

せっかく彼から名乗ってもらったのに、私は直ぐ彼のフルネームが頭に浮かばなかった。

そんな焦った私の様子に、彼は苦笑いをした。

「日下英輔。ちゃんと覚えてくれよ。俺の実家は岐阜になるから、会社の社宅に入る事になる。」

私はゆっくりとうなずいた。

「じゃあ、帰りながら話でもして行こうか。名古屋までは一緒だろう。」

そう言われて何となく彼と肩を並べて駅まで歩き出した。

私はチラリと横にいる彼を見た。

「あの研修で一緒だったって事は、営業さんですよね?」

何をきっかけに話をしたらよいのか分からなくて、ついそんな事分かり切った事を聞いてしまった。

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