運命の出会いって信じますか?
でもその時には、どちらからも結婚という言葉は出なかった。

英輔の転勤の話が出た時、不器用な私には遠距離恋愛なんか出来ないと思っていた。

だからすぐに英輔とは終わってしまうんじゃないかと、ぼんやり考えていた。

そう、その時点で私達は遅すぎた春を迎えていたのだから、逆に別れ話が出てもおかしくはなかった。

お互いがそう感じていたのか、出発の日までどちらともそのことについては触れずじまいだった。

もしかしたら、別れを告げられるかもしれない。

そう覚悟して見送りに行った空港の出発のロビーで、英輔は私にこう言った。

「これからの事は華の意志を尊重したい。でも俺は待っていてほしい。」

久しぶりに英輔の気持ちが聞けたような気がした。

きっと英輔なりに考え抜いた末の言葉だったと思う。

あまりにも長くそばに居すぎて、こうやって自分の気持ちをお互いに話す事もなくなっていたような気がする。

そう、空気みたいな存在。

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