運命の出会いって信じますか?
「じゃあ、何の気兼ねもいらないね。連絡先を教えてよ。」
どうしてそこにそんなにこだわるのか不思議だったけど、別に連絡先を教える事に抵抗はなかった。
だって、同じ会社に入って一緒に働くのだから、遅かれ早かれ連絡先は交換する事になるだろうから。
私はゆっくりと自分の鞄からスマホを出した。
私のその行動に、彼は一瞬笑顔を見せると、自分も慌てて着ているスーツの内ポケットからスマホを出した。
「ありがとう。」
素直にそんな言葉を出せる彼にドキッとした。
こんな些細な言葉が嬉しく感じる。
彼は大事に育てられてきたんだろうな…なんて思ってしまった。
私達はそこで別れた。
何か良い人だな…、そう思いながら歩いている私の後姿を、彼がずっと見送ってくれていた事を知ったのは、私達がお付き合いを始めてからの事だった。