運命の出会いって信じますか?
しかし、それがどう上層部に伝わったのかは分からないが、タイから名古屋支社へ戻る予定だった英輔の赴任先は東京本社に急遽変更になった。
そして私は会社に籍を置いたまま産休扱いとなり、復帰は東京本社という事になった。
「早く会社に復帰して欲しいって今日はかなり懇願されてしまったぞ。華の仕事ぶりは本社にまで届いていたんだな。」
にこにこしながら真先を眺めていた英輔が私に視線を移す。
「うちの会社は最長3年間産休を取れるって聞いているんだけどな。」
私は少々不機嫌な顔を英輔に向ける。
「本社なら社内に託児所もあるようだし、そろそろどうなの?」
仕事熱心で優秀な英輔はしきりと私に会社の復帰を勧める。
「総務で各支社から集まってくる契約書のチェックを出来る人間を探しているらしい。華みたいにいろんな契約書の知識を持つ人間がなかなか居ないらしいぞ。」
私はじろりと英輔を見る。
「私は英輔にしっかり鍛えられたからね。」