運命の出会いって信じますか?
「ああ、彼は会社の同期の日下君。今日は一緒に出掛けてくるね。」
ただ淡々とそう言った私は、彼を促して外へ出ようとする。
「では、娘さんをお借りします。」
日下君はもう一度お母さんにきちんと身体を向け、軽く頭を下げた。
「はーい、ゆっくりしておいでよ。今夜は帰って来なくてもいいよ。」
そんなぎょっとするセリフを吐いたのは、いつの間にかお母さんの後ろに来ていたお姉ちゃん。
お母さんが苦笑いをしている。
それに全く動じる事もなく、彼は笑った。
「やっとデートにこぎつけたところなので、まだまだその心配には及びません。」
私は一瞬焦って、彼の方を向いた。
「あら、そうなの。今日はしっかり華にアピールするのよ。」
お姉ちゃんはくすくす笑いながら、日下君に言った。
「あらあらごめんなさいね。二人ともこんな娘に育てたつもりはなかったんだけど。」