運命の出会いって信じますか?
英輔の期待に応えるためにも、これからはそんな甘えた考えを捨てなくてはならない。
だから社宅に泊まらせてもらった時も、私達二人は仕事談義に明け暮れた時期もあった。
英輔も疲れているはずなのに、私の話にしっかりと耳を傾けてくれた。
彼の部屋に泊まらせてもらっている代わりに、夕食の準備はした。
でもそれは恋人の甘い生活ではなく、まるで会社の仕事を社宅に持ち込んでの研修のようなものだった。
英輔はただ仕事が出来て恋人である私を、仕事上で甘やかすような人間ではなかった。
今でも仕事に関しては、英輔に鍛えられたんだと思っている。
でも半年もすると、周りは英輔だけではなく私にも仕事に関して何も言わなくなった。
それどころか…。
「野々村さん、このパターンの契約の伝票処理教えてくれる?」
そんな質問を先輩から受けるようになっていたのだ。