運命の出会いって信じますか?
英輔の本気とも冗談とも取れるその表情が憎らしい。
「もう少し時間が欲しいかな。」
英輔は私の横にやってくると座って、私の様子を伺っていた。
「華は面白いな。俺の連れ達はみんな彼女から結婚を迫られているらしいぞ。なのに華は…。」
英輔の腕が私の身体に回る。
「英輔は結婚したいの?」
私は英輔の肩に自分の頭をもたれかけた。
「華がそばに居てくれるんなら全く問題はない。」
彼の手が私の髪を優しくなでる。
「華、抱いていい?」
英輔のそんな声に私はゆったりとうなずく。
今思うと、結婚の話が二人の間で出たのはこの時が最初で最後だった。
その時は3年後に、英輔がタイに赴任する事になるなんて思わなかった。