恋の魔法と甘い罠Ⅱ
「そんなつもりじゃ……」


「まあ、いっか。玲夢に会えたし」


「……」


「しかも同じビルで働いてるとか、運命じゃね?」


「……」



あの頃と変わらない太陽のような明るい笑顔でそう言ってくる朔に、あたしは何と言えばいいのかわからず、ただ笑顔を返すことしかできなくて。



「本当はこっちに来るのあんまり乗り気じゃなかったんだけどさ。いやあ、テンション上がるわー」


「……」


「これからよろしくな」


「……うん」



駅に着いてからも、何故か同じ電車に乗っていて。


降りる駅も一駅違うだけで。



「じゃあな」


「うん」



ドアが閉まって、中から手を振っている朔にあたしも手を振り返しながら、小さくなっていく電車を見送っていた。
< 157 / 491 >

この作品をシェア

pagetop