Luce+
第一章 出会い
春。
暖かな日差しで目が覚める。
ベッドから出て、制服に着替え、食堂へ向かう。朝ごはんは米派。朝ごはんを抜いたら死んでしまう。だから朝ごはんはゆっくり食べる。
1歩外へ出てみると、世界はまっピンク。誰がこんなに桜を植えたのか、花びらが髪の毛にまとわりついてくる。せっかくキレイにセットしたのに、花びらをどける手で少しずつ乱れていく髪。髪の毛なんて対したことないと思うけれど、今日は全校生徒の前に立たなければならないことを思い出して少し落ち込む。
そういえば、今日の入学式のスピーチをまだ考えていない。だけど、私の足はもう校門まで歩いてしまっていた。
「おはようございます、お姉様。今朝も大変麗しいようで結構ですこと。」
そういって、ミディアム丈にウェーブがかったくるみ色の毛をいじりながら近付いてくるのは、生徒会副会長の東月すずだ。すずは同い年で幼馴染みだ。なのにいつからか私のことを“お姉様”と呼んでからかってくる。まぁ、すずにとっての私は昔から姉のようなものだが…様とはなにか、いつか問い詰めてやりたい。
「お姉様!おはようございます!今朝のスケジュールつまりまくってるんで早く行きましょう!」
校門から走ってきて私の手を引くこの子は藤咲京華。生徒会会計だ。うちの末っ子とでも言えば良いか。私たちの1つ年下だ。だが一番勉強ができるのはこの子だ。だから生徒会にスカウトした。
そして、この2人にお姉様と呼ばれている私は卯月ゆめこ。このエトワール学院の生徒会長をしている。学院の生徒たちからもなぜかお姉様と呼ばれ、キラキラとした、なにか尊いものでも見るかのような視線をおくられる。だけど、私はそんな大した人間ではないのだ。生徒会長だって、すずの推薦でなったようなものだ。だが、やるからには皆が納得するような結果を出す。これが私のモットーだ。
私たちは一度生徒会室に行き、予定の確認をする。入学式の挨拶なんて、新入生に言いたいことを言えばなにか伝わるだろう。
真面目な京華はそれを許さないが、時間がきたので新入生の待つ講堂へ向かう。
不満げな京華だったが、彼女には彼女の大切な“司会”という仕事があるので、彼女の顔は入学式が近づくにつれ、だんだんこわばっていく。
「そんなに緊張することないわよ。いつも通りにいきなさい。」
と、京華の頭を笑いながら撫でるすずに、京華は「また子供扱いして~っ!」とまた拗ねたような顔になる。
いつもの2人の光景だ。もう京華は大丈夫だろう。私はスピーチの内容を考えながら自分の出番を待った。
そして、私のスピーチが始まる。
舞台の上に立ち、胸を張って、さぁ新入生に何を言おうか。言いたいことが頭をよぎる。
「新入生の皆さん、おはようございます。外は桜でまっピンクな今日、皆さんはこのエトワール学院に入学してきました。ここでは自分の夢にむかって…」
…どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。スピーチどころではない。見つけてしまった。私の目の前にいる。あの子が。名前も知らないあの子が。
私の目の前に居たのは、以前モデルの仕事をしていたときに現場ですれ違った女の子。凛々しくツンとすました顔をして、それでいて愛らしい。茶色のまっすぐな長髪を揺らしながら風のように歩いていった。あの子のことがずっと忘れられなかった。ずっと、それは恋のように。
スピーチを止めてしまったために、講堂がざわめきだす。事の大変さに気付いた。落ち着こう。後からでもいいんだ。
““あの子は、ここに入学してきたんだ!””
そして、私は皆の前で堂々とスピーチを続けた。
暖かな日差しで目が覚める。
ベッドから出て、制服に着替え、食堂へ向かう。朝ごはんは米派。朝ごはんを抜いたら死んでしまう。だから朝ごはんはゆっくり食べる。
1歩外へ出てみると、世界はまっピンク。誰がこんなに桜を植えたのか、花びらが髪の毛にまとわりついてくる。せっかくキレイにセットしたのに、花びらをどける手で少しずつ乱れていく髪。髪の毛なんて対したことないと思うけれど、今日は全校生徒の前に立たなければならないことを思い出して少し落ち込む。
そういえば、今日の入学式のスピーチをまだ考えていない。だけど、私の足はもう校門まで歩いてしまっていた。
「おはようございます、お姉様。今朝も大変麗しいようで結構ですこと。」
そういって、ミディアム丈にウェーブがかったくるみ色の毛をいじりながら近付いてくるのは、生徒会副会長の東月すずだ。すずは同い年で幼馴染みだ。なのにいつからか私のことを“お姉様”と呼んでからかってくる。まぁ、すずにとっての私は昔から姉のようなものだが…様とはなにか、いつか問い詰めてやりたい。
「お姉様!おはようございます!今朝のスケジュールつまりまくってるんで早く行きましょう!」
校門から走ってきて私の手を引くこの子は藤咲京華。生徒会会計だ。うちの末っ子とでも言えば良いか。私たちの1つ年下だ。だが一番勉強ができるのはこの子だ。だから生徒会にスカウトした。
そして、この2人にお姉様と呼ばれている私は卯月ゆめこ。このエトワール学院の生徒会長をしている。学院の生徒たちからもなぜかお姉様と呼ばれ、キラキラとした、なにか尊いものでも見るかのような視線をおくられる。だけど、私はそんな大した人間ではないのだ。生徒会長だって、すずの推薦でなったようなものだ。だが、やるからには皆が納得するような結果を出す。これが私のモットーだ。
私たちは一度生徒会室に行き、予定の確認をする。入学式の挨拶なんて、新入生に言いたいことを言えばなにか伝わるだろう。
真面目な京華はそれを許さないが、時間がきたので新入生の待つ講堂へ向かう。
不満げな京華だったが、彼女には彼女の大切な“司会”という仕事があるので、彼女の顔は入学式が近づくにつれ、だんだんこわばっていく。
「そんなに緊張することないわよ。いつも通りにいきなさい。」
と、京華の頭を笑いながら撫でるすずに、京華は「また子供扱いして~っ!」とまた拗ねたような顔になる。
いつもの2人の光景だ。もう京華は大丈夫だろう。私はスピーチの内容を考えながら自分の出番を待った。
そして、私のスピーチが始まる。
舞台の上に立ち、胸を張って、さぁ新入生に何を言おうか。言いたいことが頭をよぎる。
「新入生の皆さん、おはようございます。外は桜でまっピンクな今日、皆さんはこのエトワール学院に入学してきました。ここでは自分の夢にむかって…」
…どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。スピーチどころではない。見つけてしまった。私の目の前にいる。あの子が。名前も知らないあの子が。
私の目の前に居たのは、以前モデルの仕事をしていたときに現場ですれ違った女の子。凛々しくツンとすました顔をして、それでいて愛らしい。茶色のまっすぐな長髪を揺らしながら風のように歩いていった。あの子のことがずっと忘れられなかった。ずっと、それは恋のように。
スピーチを止めてしまったために、講堂がざわめきだす。事の大変さに気付いた。落ち着こう。後からでもいいんだ。
““あの子は、ここに入学してきたんだ!””
そして、私は皆の前で堂々とスピーチを続けた。