Engage Blues





「コウッ。今すぐ調べて欲しいことがあるのッ」


《若林さんの行方ですか?》

「何で知ってんのよッ!」

《偶然、虎賀家の動きが耳に入ってきたんですよ。子トラ兄弟に部下を張りつかせてましたし》


 とんとん拍子に進む話に、不自然さを感じるものの、突っ込むタイミングを失ってしまった。

 コウの口ぶりは、素人っぽくない。
 まぁ、あいつは凰上家が使っていた間諜の一族だ。いまだにその隠密スキルを伝承し、有事の際には実行できる。


 わたしも、コウの情報網を期待して美由紀の居場所を特定しようとしたけど。

 というより、問題は……


「知ってて、助けてくれなかったの!?」

《俺の仕事は梨花の守ることです。その他のことなんか知ったこっちゃないですよ》


 そっけなく返され、言葉をなくした。

 コウにとっては、その程度。慶さんの人格や好感がどうのって話じゃない。

 公と私を独自の基準で、薄皮一枚も残さずに切り離す鉄の理性。
 時折、膝をつかせた相手をも破滅させる情報網は、千里眼と評される。


 歴史の影で、権力者たちが喉から手が出るほど欲した忍の末裔。それが、コウだ。





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