Engage Blues
その可能性を含む秘密を爆弾として抱えている。
今となっては、虎賀さんとの出会いが予兆のように感じられた。
梨花に全てを打ち明けて許しを請う時が迫ってきている、と。
そう悟った瞬間、彼女の顔は悲しげに歪められた。
「……そこまで、あの娘が好きですか」
「はい」
即答できてしまえるほど。
中途半端な好意で彼女を繋ぎ止めていると思われたくない。
梨花は、実家に帰りたがらない。俺のように、家族との確執があるわけではなさそうだ。
となれば、他に考えられる理由はひとつ。
俺自身を家族に知られたくないのだろう。
虎賀さんは、初めて会う梨花の身内だ。
多少の下心も手伝い、彼女の心証をよくしたい部分がある。
虎賀さんも気付いていると思う。
しばらく面を伏せていた彼女が、居住まいを正す。
改まった口調で来るべき時が来たと覚悟した。
「若林さん。安心なさって。今の状況を作った最大限の原因は、あなたではありません。むしろ、最低だと責められるべきは梨花の方です」
挑戦的な視線に、最後の言葉は不可解だった。
「え……?」