Engage Blues





 すぐには信じられなかった。
 ぽかんと口を開けて、彼を見てたと思う。


 夢の中の出来事のようで、慶さんに声をかけられて、やっと現実味を帯びてきた。


 嬉しさのあまり、どっちも失神した。
 再び意識を取り戻した時、驚いたように覗き込む慶さんの顔が忘れられない。


 付き合ったらデートはしてくれるのに、なかなかキスしてくれないことが不安だった。
 半ば破局も覚悟で押し倒したら『また失神されたら困る』と真顔で返された。


 あながち否定できない。

 ふたりで気まずい雰囲気の中、しばらく沈黙してた。
 それではいけないと思って、自分からキスした。

 慶さんの照れくさそうな笑顔に、恥ずかしさで発狂しそうだった。

 幸い、失神はしなかったけれど腰くだけになって、その日は立てなかった。







 ずっと。
 ずっと、一緒にいたかった。


 本当だよ?


 慶さんと結婚したいなって思ってた。

 意識したのは、たぶん、あの時。

 大学を卒業して、通勤のために引っ越そうかなって考えてた時。
 慶さんに一緒に暮らさないかって誘われた。


 漠然とした希望が現実になった瞬間。





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