Engage Blues
だからこそ、怖かった。
家も武術も、いつかはバレる。
だって、わたしの一部だから切り離すことなんてできない。
でも、打ち明けたら、慶さんの気持ちが離れてしまうかもしれない。
ガッカリされるかも。
幻滅されるかも。
傷つけてしまうかも。
もちろん、わたしも。
それが怖くて言えなかった。
隠してしまえば、もっと状況が悪くなるだけなのに。
ごまかして、嘘ついて、秘密にして、何が守れる?
結局、慶さんを巻き込んだ。
結婚?
幸せ?
武術?
果たし合い?
名誉?
最強?
そんなことより、もっと大事なものがあるはず。
わたしが、失いたくないものは別のもの。
涙でぼやける視界に手をかざす。
痛い思いをしても、悲しい結末を迎えても。
わたしは、『これ』をしなきゃならない。
「凰上家流闘術ッ!!」
叫ぶ声と同時に闘気を掌に集中させる。
「【八卦甲掌】ッ」
爆発するような衝撃が道場の扉を粉砕させた。
砂煙が舞う内に中へ乗り込む。
木材の破片がブーツの底にこすれる。