Engage Blues
糖分過剰摂取にて、溺れそうな勢いです。
(……どうしよう)
目的地についたはいいが、わたしはマンションのエントランスをうろうろする。
スマートフォンを固く握りしめたまま。
あのあと、運よく子トラ兄弟を撃退したけど。
予定時間を大幅に遅れての帰宅。
なんて言い訳したらいいのか。
いや、嘘はよくない。
今日こそ、彼に本当のことを告げなければ。
(……でも、どう説明したら)
ぐるぐると、まとまらない思考が頭の中を巡ってる。
そのせいでエレベーターの作動音に気付くのが遅れた。
あ、まずい。変に思われる。
降りてくる人と目を合わせたくなくて、玄関の方を見てしまう。
いや、この時間でエントランスにいるのも不自然なんだけどー。
鉢合わせになった居たたまれなさを胸中で想像してみれば、背後から声をかけられた。
「……梨花?」
「うわッ、はいッ!」
条件反射で返事してから、振り向く。
エレベーターから顔を出して来たのは、予想とは違った。
背の高い男性だった。
マンションの住人と思しき、ただの赤の他人じゃない。