Engage Blues
誰の目からみても、次男が正当な後継者だと認められるためを思って。
わたしの勝手な言い分だけど。
慶さんの気持ち、ほんの少しでも鬼洞家の人たちに伝わればいいな、なんて考えれば。
ぎゅっと強く指先を握り込まれた。
「だが……今は少し揺らいでいる」
まっすぐ前を向いたまま、少しだけ表情を曇らせる。
今までの選択が正しかったのか迷ってるみたい。
わずかに揺れた瞳を捉えたら、次の発言はいささか突飛すぎた。
「……梨花に捨てられると思った」
「えぇぇぇッ?」
何故そうなる?
蚊の鳴くような声で何を言い出すのやら。
じっくり待っていると、慶さんも説明をはじめてくれた。
「俺が相手では、不釣り合いだと思われる可能性が高い。両親から受け継いだものはないし、家庭の温もりも知らない。梨花を幸せにできる力が足りないと判断されたら、そこで終わりだ」
ああ、そうか。
慶さんは不安だったんだ。
わたしの両親と対面した時、今まで望まなかったものがマイナスな印象として受け取られる。
そんな不安をずっと抱えていたんだ。