Engage Blues





「ご、ごめんなさい……」

 本当の事情は言えない。マジで。
 待ち伏せされてたとはいえ、年下の男の子ふたりを相手に衝撃波をぶち当ててしまったのだ。


 とはいえ、慶さんの不安はまだ拭い切れない。
 抱き締める力は緩めてくれたけど、こっちを見つめて沈黙したままだ。


「あ……ただいま?」


 言うべき挨拶が遅れて、無意識に声が上擦る。


 すると形の整った目尻や口元などに、わずかな曲線ができた。
 何か、嬉しかったんだろうか。


 慶さんは、額やこめかみに軽く唇を落としてくる。
 ボッと一気に体温が上昇した。

 あまりの早業で気付くのは、された後だ。

 ここ公共の場だからとか、いきなり過ぎですとか、忠告する暇もない。


 頬の熱も自覚できた頃、またもや流れるような動きで腰を抱かれた。


「早く戻ろう。すぐに夕飯、温め直すから」

「は、はい……」


 わかっててやってるのか、全く自覚なしなのか。
 淀みなさすぎなエスコートに、ひたすら恐縮する。





< 15 / 141 >

この作品をシェア

pagetop