Engage Blues
「ご、ごめんなさい……」
本当の事情は言えない。マジで。
待ち伏せされてたとはいえ、年下の男の子ふたりを相手に衝撃波をぶち当ててしまったのだ。
とはいえ、慶さんの不安はまだ拭い切れない。
抱き締める力は緩めてくれたけど、こっちを見つめて沈黙したままだ。
「あ……ただいま?」
言うべき挨拶が遅れて、無意識に声が上擦る。
すると形の整った目尻や口元などに、わずかな曲線ができた。
何か、嬉しかったんだろうか。
慶さんは、額やこめかみに軽く唇を落としてくる。
ボッと一気に体温が上昇した。
あまりの早業で気付くのは、された後だ。
ここ公共の場だからとか、いきなり過ぎですとか、忠告する暇もない。
頬の熱も自覚できた頃、またもや流れるような動きで腰を抱かれた。
「早く戻ろう。すぐに夕飯、温め直すから」
「は、はい……」
わかっててやってるのか、全く自覚なしなのか。
淀みなさすぎなエスコートに、ひたすら恐縮する。