Engage Blues
ご飯をすぐに温めなおすと言われたら。
てっきり簡単なものかと思ってた。
すると、テーブルに並ぶメニューは豪華すぎるほど。
……食べきれるかな?
「おいしいッ」
マッシュルームの入ったリゾットに、思わず正直な感想がこぼれる。
ほどよい温かさと柔らかさ。チーズの風味が鼻をくすぐる。
かぼちゃのトマト煮は、双方の甘味と酸味でケチャップのよう。
白菜のグラタンはオーブンを使わずに鍋で煮たらしい。
スープのきのこチャウダーはもちろん、おつまみ用だったのか、茄子のはさみ焼きに手を出す頃にはお腹がいっぱいになっていた。
どれも一度、冷めたとは思えないほどの美味しさ。
レストランのシェフでも通用するんじゃなかろうか。
思ってたことが顔に出たみたい。
向かいに座る慶さんが少し口元を緩ませる。苦笑の類みたいだ。
「大げさだな」
「いいえ。本当に美味しいんですって」
アスパラのスティック春巻きにのびる手が止まらない。パリパリとした音と香ばしい匂いが、減退するはずの食欲を呼び戻してしまう。