Engage Blues
「……まぁ、そんな顔で平らげられたら悪い気はしないな」
いやいや。
残すなんて、もったいないですよ。
それとも、ちょっとは遠慮するべきだろうか。
いつも完食してしまっても、こんな風に上機嫌なのでついつい食べすぎてしまう。
もしや、彼の趣味はわたしを肥えさせることだろうか。
慶さんと付き合うようになってから、体重計に乗るのが怖い。
ほぼ一定だった数値が確実に増えてる。
子トラ兄弟を相手に気苦労を増やしてなければ、養豚場の豚のごとく、まるまると太っていただろう。
しかしながら、慶さんの絶品グルメには毎回メロメロになってる。まずい。まずすぎる。
ダイエットをしなければ。
そんで、ご飯はなるべくわたしが作ろう。
新たな誓いを立てた瞬間だった。
慶さんが思い出したように口を開く。
「デザートにチーズケーキも作ったんだ」
「えッ、ほんとですか?」
キッチンへ向かう恋人を追いかける。
慶さんの作るケーキは最高の贅沢だ。絶品なんてレベルじゃない。
わたしは餌づけされた猫のごとく、慶さんの後をついてく。
もちろん、ダイエットなんて忘却の彼方である。