Engage Blues





「あ、片付けますね」

 ついでに残っている皿を回収しようと踵を返す。
 空の食器を重ねてキッチンへ運ぶ。流し台に置いて水を張っている間、


 ふと顔をあげると、慶さんが並んで横に立ってした。
 何事かと視線を送れば、そっと腰に手を回してくる。


「……どうし」


 さらに顔をあげて訊ねようとしても、できなかった。

 降りてきた唇に塞がれて、先を封じられる。
 何度も角度を変えて強く求めてきた。吸われる度に、頭の中が甘く痺れていく。



「ん、ん……ん、ま、待っ……待ってッ」


 途切れた合間に制してみたものの、強く抱き締められて抵抗できない。
 腕の中、耳元で微かな溜め息が落ちてくる。


「もう限界」


 甘ったるい囁きに、身体が震えた。

 彼の唐突すぎる要求に、ついていけない。
 ずっと耳に届く水の音で、かろうじて理性を繋ぎ留めようとする。




「で、でも、お皿が……」

「後でいい」





 慌てて、水道の蛇口をひねる。

 その気になったとかではなくて、ここで止めなかったら出しっぱなしになりかねない。





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