Engage Blues
「買い物は俺が行ってくるから、梨花は準備しといて」
「……何の」
首を傾げる途中で気付く。
もしかして、デートのお誘いですか?
さっさと買い物をすますから、その間に服を選だりメイクして待ってろってことですか?
でも、確証がなくてはっきりと訊けない。外したら恥ずかしいし。
どきどきと高鳴る胸を押さえて、慶さんをじっと見つめる。
意図を図りかねているのを察してくれたのか、向かい合わせにコツッと額を寄せてきた。
息もかかる近い距離で、優しく囁かれる。
「待ち合わせは十一時、駅前で。そろそろ寒くなってきたし、冬物の雑貨巡りでもするか? 映画とディナーも込みで」
ちょっと意地悪な笑顔で提示された休日プランは魅力的だった。
悩むまでもない。
そ、そんなの決まってるじゃないですか。
「い、行きたいです」
上擦った声で返事をすると、慶さんはとても嬉しそうに微笑む。
「じゃ、決まり」
軽く呟いて、額に触れるだけのキスをする。
流れるように自然な動作だったので身構える暇もなかった。