Engage Blues
「あのね。人間、隠せる秘密と隠せない秘密ってあるでしょ。今回は、間違いなく後者ですよ。結婚するなら両家の事情は筒抜けになっちゃいますって。否応なしに」
まるで駄々っ子をたしなめる口ぶり。
端から、わたしを擁護する気はこれっぽちもないのだ。
「別れるのが嫌なら、正直にぶっちゃけるしかないですよ。どうせ隠してても、ふたりで梨花の実家を訪れたら一発でバレます」
言われて、サッと血の気が引いていく。
慶さんが、あの家の敷居を跨ぐ日。
日本庭園なんて聞こえはいいが、同じ敷地内にある道場を見られたらごまかしようがない。
「無理。絶対、無理……あんな家だと知られたら、慶さんに捨てられちゃう」
「その方が一番、後腐れないんじゃないですかね」
どうでもよさげに呟くコウの表情は、まるきり他人事だ。
いや、彼にしてみれば立派な他人事だ。けど、ここまで無関係っぽい態度を取られると恨み節だって出てしまう。
「コウ~、あんた。さっきから人が黙ってりゃ、言いたい放題ぶっちゃけて」
「僕の気のせいでなければ、梨花が黙った時間は最長でも約一分かと……」
「あぁッ、もう! いちいち細かいわねッ!」