Engage Blues
「大アリですよ。跡目争いをしてる【鬼洞家】は、開祖の血を色濃く受け継ぐ一族です。後継者争いがより活発化すれば、誰だってもっと優位な条件を満たしたいじゃないですか」
最後まで聞かなくとも、ぴんときた。
「……なるほど。奥義書ね」
「そういうことです」
コウの意図を正確に読んだらしい。彼が一回だけ大きく頷いた。
「世界最強と謳われる二家、【鬼洞家】と【龍御家(たつみけ)】は当然として……次に所有している奥義書が多いのが凰上家です」
わたしは重くなった額を掌で押さえた。
何を言いたいのかハッキリ伝わってくる。
「わかった。闇討ちに気をつけろってことね」
短く頷く。
コウは普段からムカつくヤツだが、凰上の分家筋にあたる総領息子だ。
一応、わたしの身辺警護という役目を仰せつかっている。
やはり、腐っても鯛。
それなりに注意するよう進言してきたようだ。
無視すれば、自分が困るだけである。
わたしが渋々と返事をすれば、背後から上機嫌の声を耳にする。
「いつもの通り、理解が早くて結構です。やっぱり凰上家流闘術の次期師範は……」
「とっとと帰んなさいッ」