Engage Blues
というか、彼らは何しに来たんでしょうか?
「ご馳走さまです」
「ご馳走さんでしたー」
店先で笑顔でハモる双子たち。
駅から少し離れた路地の先にある、小さな定食屋。人のよい夫婦ふたりで切り盛りする温かい雰囲気のお店だった。
常連客は食べ盛りの男子校生や大学生ばかりで、武闘家の子トラ兄弟たちの腹も満たす恐るべき鉄人の腕。
おいしいものを食べて不機嫌になる人間はいない。
虎太郎も虎次郎も幸せそうに笑う。
まるでお腹の膨れた虎の子みた……
「満足したか?」
「はい。とても」
「こんなにボリュームある食事は久しぶりッス」
人懐こい双子の表情は、虎の赤ちゃんみたいに愛らしい。
道行く人が振り返りながら目を細める。それだけ、微笑ましい光景ってこと。
きっと虎賀の道場じゃ、上下関係が厳しくて、こんな風に可愛がってもらったことないんだろうな。
わりかし、彼らとの付き合いも長い。学ラン中学生の頃から知ってるから、ついついお姉さん目線で見つめてしまう。
虎太郎が礼儀正しく挨拶すれば、その成長ぶりも感慨深い。