Engage Blues
「はい、そうです。既成事実デートを作るため、わざと張っておいた罠(トラップ)です。こんなに早く発動するとは思わなかっ……」
「とっとと行ってしまえッ! さっさと幻滅されて失恋しろッ!」
怒りに任せ、履いていたショートブーツを掴んで放り投げた。
コウの頭を狙ったのに、あっさりとかわされた。
「不吉なこと言わんでください。今が絶好の攻め時なんですよ」
「その発想は間違ってるから! もう可及的速やかにフラレて来なさい!」
なんか、その上司さんとはどうやってもうまくいかない気がする。
愛だけじゃ乗り越えられない壁があるんなら、こういう状況なのかもしれない。
でも、無理っぽい。
その後ろ姿は、ものすごく嬉しそうだ。
やっぱり不憫な上司に謝罪しつつ、帰途につく。
どうか、あのマゾ男の餌食になりませんようにと祈りを込めて。