Engage Blues






「はい、そうです。既成事実デートを作るため、わざと張っておいた罠(トラップ)です。こんなに早く発動するとは思わなかっ……」

「とっとと行ってしまえッ! さっさと幻滅されて失恋しろッ!」


 怒りに任せ、履いていたショートブーツを掴んで放り投げた。
 コウの頭を狙ったのに、あっさりとかわされた。

「不吉なこと言わんでください。今が絶好の攻め時なんですよ」

「その発想は間違ってるから! もう可及的速やかにフラレて来なさい!」


 なんか、その上司さんとはどうやってもうまくいかない気がする。
 愛だけじゃ乗り越えられない壁があるんなら、こういう状況なのかもしれない。


 でも、無理っぽい。
 その後ろ姿は、ものすごく嬉しそうだ。


 やっぱり不憫な上司に謝罪しつつ、帰途につく。

 どうか、あのマゾ男の餌食になりませんようにと祈りを込めて。





< 66 / 141 >

この作品をシェア

pagetop